
「塗装工事の中身は、終わってしまえば確認できない」
外壁や屋根の塗り替えを検討されている方から、こうした声をよくいただきます。

工事が終われば、どの現場もきれいな外観になります。
完成写真だけを並べれば、業者による違いはほとんど分かりません。
ですが、塗装の持ちを決めているのは、完成すると見えなくなる工程のほうです。
下地処理を省いても、塗料を規定より薄めても、塗り上がった直後の見た目はほとんど変わりません。
差が出てくるのは、数年経ってからです。
今回は、施工中の写真をもとに、それぞれの工程が何のために行われているのかを実際に施工した事例を元にご紹介します。

塗装は、塗る作業そのものよりも、塗る前の判断と場所ごとの使い分けで結果が変わります。だからこそ、途中の写真を残してお客様にお見せしています。
塗装工事の施工工程

塗装工事では、いきなり塗料を塗るのではなく、塗装する部分の状態を確認しながら下地を整えていきます。
そのうえで、場所に合わせてローラーや刷毛、吹き付けを使い分けながら施工します。
同じ建物の中でも、塗る場所によって適した道具はまったく違います。
- 平らで広い面。
- 凹凸のある面。
- 器具のきわや、素材が切り替わる境目。
それぞれに合った方法を選ばなければ、塗料が届くべき場所に届きません。
今回の工事について、施工中の写真とあわせて工程をご紹介します。
屋根板金部分の下地処理

屋根の板金部分を研磨材でこすり、塗装前の下地を整えている工程です。

この作業を、塗装の現場ではケレン、または素地調整と呼びます。
目的は3つあります。
- 浮いている古い塗膜を取り除くこと。
- 発生しているサビを落とすこと。
- 金属の表面にわずかな傷をつけることです。
3つめが、意外に思われるかもしれません。
金属の表面はなめらかで、そのままでは塗料が滑ってしまいます。
細かい傷をつけて表面をざらつかせることで、塗料が引っかかる足がかりができます。
この足がかりのことを、専門的には目荒らしと呼びます。
目荒らしの有無で、塗膜の密着力は大きく変わります。
また、サビの上から塗料を重ねても、サビは塗膜の下で進行を続けます。
やがて内側から塗膜を押し上げ、膨れや剥がれとなって表れます。
塗った直後はきれいに見えていても、数年で症状が出てくるのはこのためです。
ケレンには、除去の程度によって呼び分けがあります。
- 1種:専用の設備でサビと旧塗膜をすべて除去する方法
- 2種:電動工具と手工具で、サビと劣化した塗膜を全面的に除去する方法
- 3種:しっかり密着している塗膜(活膜)は残し、劣化部分だけを除去する方法
- 4種:粉化した塗膜や汚れを落とし、表面を目荒らしする方法
一般住宅の付帯部では3種か4種で対応することが多く、サビの進行具合によって使い分けます。
どの程度まで落とすかは、現場で板金の状態を見て判断します。
屋根の端部まで、細かく研磨します

こちらも屋根板金部分の下地処理です。
細かな部分まで研磨し、これから行う塗装のための下準備を進めています。
屋根まわりの板金は、雨水の流れを受け止め、屋根の内部へ水が回り込むのを防いでいる部材です。
金属である以上、塗膜が失われればサビが進み、やがて穴が開いて雨水の侵入口になります。

面積は小さくても、建物を守る順番でいえば最前線に立っている部分です。
そしてケレンには、もうひとつ守るべき順番があります。
研磨した金属面は、空気に触れた時点から再びサビはじめます。

そのため、ケレンを終えた面には、その日のうちにサビ止めの下塗りを入れます。
研磨したまま数日放置すれば、せっかく落としたサビが表面に戻ります。
工程の順番と間隔を守ることも、下地処理の一部だと考えています。

ケレンは、手間がかかるわりに完成すると見えなくなる作業です。
ですが、ここを省くと、どんな塗料を使っても本来の性能は出ません。
見積書で確認しておくと安心なこと
- 板金部分の下地処理(ケレン)が項目として書かれているか
- サビ止めの塗布が工程に含まれているか
- 付帯部の塗装回数が書かれているか
- 「一式」ではなく、部位ごとに数量と単価などの内訳が分かれているか
完成すると見えなくなる工程だからこそ、着工前に確認しておくことをおすすめします。

もし気になる場合は、他社のお見積りについて、書かれている内容の意味をご説明することもできます。
軒天部分と、シャッターへの吹き付け塗装

周囲に塗料が付着しないよう養生を行い、軒天部分と、シャッターへ吹き付けで塗装しています。
軒天とは、屋根が外壁より外側に張り出している部分の、裏側の天井にあたる場所です。
見上げなければ目に入らないため、意識されることの少ない場所ですが、塗装工事では特に注意して見る部分のひとつです。
吹き付けを選ぶのは、軒天の表面に細かな凹凸があるためです。
軒天に使われる板は、表面に穴や模様が入っているものが多くあります。

ローラーだけでは、そのくぼみの奥まで塗料が届きにくくなります。
霧状にした塗料を吹き付けることで、凹凸の内側まで均一に行き渡らせることができます。
一方で、吹き付けには扱いの難しさがあります。
霧状の塗料は風に乗り、想定より広い範囲まで飛散します。
だからこそ、吹き付けを行う現場では養生の範囲が広くなります。
写真でも、シャッターや外壁が広い範囲で覆われているのが分かります。
風の強い日は、養生をしていても飛散の範囲が読めなくなります。
そのため、当日の風の状況によっては吹き付けを見送り、工程の順番を入れ替えて対応します。
この工程のスケジューリングの難しさは、実際に行っている業者側でしかわからない苦労だったりもします。
塗らない部分を守ることは、仕上がりのためだけでなく、隣家の車や外構への飛散を防ぐためでもあります。

工事は、お客様のお住まいだけで完結するものではありません。
ご近所への影響まで含めて考えるのも、工事の一部だと考えています。
軒天をローラーで塗装


軒天の広い面は、ローラーを使って塗料を均一に塗り広げていきます。
照明器具などはあらかじめ養生し、周囲に塗料が付かないよう確認しながら施工しています。
ここで、軒天という場所についてもう少しお伝えしておきたいことがあります。
軒天は、建物の中で最も乾きにくい場所です。
直射日光がほとんど当たらず、湿気がこもりやすい。
湿気が抜けないまま塗膜で密閉すると、内側から膨れて剥がれてくることがあります。
軒天には、湿気を通す性質を持った塗料を選ぶ必要があります。

外壁と同じ塗料をそのまま流用すればよい場所ではありません。
そしてもうひとつ、軒天には重要な役割があります。
軒天のシミや剥がれは、屋根や外壁から雨水が入り込んでいるサインである場合があります。
雨水は入った場所の真下に落ちるとは限らず、下地を伝って離れた場所に症状として出てきます。
色が変わっている、一部が波打っている、めくれている。
こうした状態を見つけたときは、塗装で覆う前に、水がどこから入っているのかを確認する必要があります。

軒天のシミは、塗れば消えます。
ですが、消えるのは見た目だけです。
塗る前に、なぜそうなったのかを確かめるようにしています。
プレストビルドが軒天で確認していること
- ・変色やシミが、汚れによるものか水によるものか
- ・下地の板に浮きや反りが出ていないか
- ・屋根まわりや外壁との取り合い部分に隙間がないか
- ・雨漏りの疑いがある場合は、屋根側からも原因箇所を確認する
塗る前の判断が、そのあとの持ちを左右します。
照明器具まわりを刷毛で仕上げ

ローラーだけでは塗りにくい照明器具のまわりは、刷毛を使って細かく仕上げていきます。
塗装の現場では、この作業をダメ込みと呼びます。

ローラーは、平らな面を効率よく均一に塗るための道具です。
その代わり、角や器具のきわ、狭い隙間には入りません。
そこで、ローラーを入れる前に、刷毛で境目を先に塗っておきます。
先に境目を塗料で埋めておくことで、あとからローラーを転がしたときに塗り残しなくつながります。
順番を逆にすると、境目に細い塗り残しの線が残ります。
離れて見れば分かりませんが、真下から見上げたときには目に入ります。
円形の器具との境目など、道具が入らない場所ほど手を止めて確認しながら進めます。
窓まわりや端部の細かな仕上げ

窓枠や軒天との境目など、ローラーでは塗りにくい細かな部分を刷毛で仕上げています。

窓まわりは、外壁材とサッシという異なる素材が接する場所です。
素材が違えば、温度による伸び縮みの度合いも違います。
そのため、この取り合い部分には常に力がかかり続けています。
窓まわりのシーリングが切れていると、そこから雨水が壁の内部に入り込みます。
外壁塗装の前にシーリングの状態を必ず確認するのは、このためです。
シーリングの補修には、打ち替えと増し打ちという2つの方法があります。
外壁材のつなぎ目にある目地は、古いシーリングを撤去してから新しく充填する打ち替えが基本です。

一方、サッシまわりは、既存のシーリングを無理に撤去すると内部の防水材を傷めることがあるため、状態を見たうえで増し打ちで対応する場合があります。
どちらを選ぶかは、施工前に理由とあわせてご説明します。
塗装は防水そのものではなく、防水された状態を保つための膜です。
シーリングが切れたまま塗装をすれば、塗った直後から水が入り続けることになります。
破風・鼻隠しなど付帯部分の塗装


軒天だけでなく、屋根まわりの破風や鼻隠しといった付帯部分も塗装していきます。
破風板は、屋根の斜めになっている端に取り付けられた板です。
軒先側の同じ位置にある板を、鼻隠しと呼びます。
どちらも屋根の端にあるため、吹きつける雨と紫外線を建物の中で最も強く受けます。
そのため、外壁がまだきれいに見えている段階でも、破風板だけが先に傷んでいることがよくあります。
特に木製の破風板は注意が必要です。

木は湿気を吸うと膨らみ、乾くと縮みます。
この動きを繰り返すうちに塗膜に細かい割れが入り、そこから水が入って、内部から腐っていきます。
破風や鼻隠しが傷むと、その裏側にある屋根の下地材にまで水が回ることがあります。
木部が傷んでいる場合、塗装だけで対応できるのか、部分的な交換が必要なのかを先に見極めます。
腐りが進んだ木に塗料を重ねても、劣化を隠すだけで進行は止まりません。
軒先部分も、塗り残しなく仕上げます

軒先部分もローラーを使い、塗り残しやムラが出ないよう仕上げていきます。
塗装は、決められた量の塗料を、決められた面積に、均一に行き渡らせる仕事です。

塗料メーカーは、製品ごとに希釈率と使用量を仕様書で定めています。
この数値を守って塗ったときに、はじめて所定の塗膜の厚さが確保されます。
塗料を規定より薄めれば作業は早く進みますが、塗膜が薄くなり、カタログどおりの耐用年数には届きません。
薄めた塗料で塗っても、塗り上がった直後の見た目はほとんど変わらないという点が、この工事の難しいところです。
もうひとつ、守るべき数値があります。
下塗り、中塗り、上塗りのあいだに必要な乾燥時間です。
前の層が乾かないうちに次を塗り重ねると、密着不良や仕上がりのムラの原因になります。
気温や湿度によって乾燥にかかる時間は変わるため、当日の天候を見ながら工程を組み立てます。
雨の予報が出ている日に無理に塗り進めないのも、同じ理由です。

塗料のカタログに書かれている耐用年数は、正しい量を正しい手順で塗った場合の数字です。
工事の中身が変われば、その数字も変わります。
付帯部と呼ばれる部分には、こんな場所があります。
- 破風板、鼻隠し
- 軒天
- 屋根まわりの板金
- 雨樋
- 水切り、幕板
- 庇(ひさし)
- シャッターボックス、雨戸

ひとつひとつは小さくても、数を合わせると建物の印象と持ちを大きく左右します。
塗装会社によって、激安なお見積りで付帯部の記載がない場合、工事の範囲に含まれていないことがありますのでご注意ください。
ご相談から工事完了までの流れ

塗装工事は、契約してから完成するまでのあいだ、お客様が中身を確認しにくい工事です。
足場とシートに覆われて外からは見えず、屋根の上や軒天の裏側は、ご自身で確認することもできません。
だからこそ、見えない部分ほど記録に残し、ご報告するようにしています。
※以下は、一般的な対応の流れです。個別には違う対応となる場合もありますので、予めご了承ください。
1.現地調査
外壁、屋根、付帯部、シーリングの状態を確認します。
その場で写真を撮り、劣化がどこまで進んでいるかをご説明します。
2.お見積りとご説明
どこに、どの工程を、何回行うのかを部位ごとに分けて記載します。
今回やるべき工事と、次回まで様子を見てよい部分を分けてお伝えします。
3.着工前のご近所へのご挨拶
足場の設置、洗浄の音、塗料のにおいは、隣家にも影響します。
工事の期間と内容をお伝えしたうえで着工します。
4.工事中のご報告
下地処理やサビ止めなど、完成すると見えなくなる工程は写真に残します。
5.完了確認
塗り残しや養生の撤去漏れがないかを確認したうえで、足場を解体します。
工事の途中で気になることがあれば、いつでもお声がけください。
下地処理から細部まで確認しながら施工します

塗装工事は、何度も言いますが、完成後の外観だけでは途中の工程が分かりにくい工事です。
プレストビルドでは、塗装前の下地処理から、軒天や屋根まわりの付帯部分、照明や窓まわりといった細かな部分まで、状態を確認しながら施工を進めています。
今回の現場だけでも、使い分けた方法は3つありました。
- 凹凸のある軒天には、吹き付け。
- 広い面と付帯部には、ローラー。
- 器具のきわや素材の境目には、刷毛。
どれか一つの方法だけでは、建物のすべての場所に塗料を届けることはできません。
※実際はもっと使用する道具は細かく分けてあります。
その使い分けを判断するために、塗る前に建物を見て回る時間を確保しています。
こんな状態が出ていたら、一度ご確認ください
外壁や屋根は、雨と紫外線と風を毎日受け続けています。
変化はゆっくり進むため、住んでいる方ほど気づきにくいという面があります。
心当たりはありませんか
- 外壁を手で触ると、白い粉が付く
- 軒天に、汚れとは違うシミや波打ちがある
- 破風板や雨樋の塗装がはがれてきている
- 屋根まわりの板金にサビが出ている
- 窓まわりのシーリングに切れ目や隙間がある
- 屋根の状態を10年以上確認していない
- 他社から工事を勧められたが、必要かどうか判断できない
外壁を触ったときに白い粉が付く現象は、チョーキングと呼ばれます。

塗膜の樹脂が紫外線で分解され、顔料が表面に出てきている状態です。
塗膜が本来の防水機能を失いはじめているサインのひとつです。
ただし、これらの症状があるからといって、すぐに大きな工事が必要とは限りません。
大切なのは、いま何が起きていて、どこまで対応すべきかを正確に知ることです。
急いで直すべき場所と、次回まで様子を見てよい場所は、建物ごとに違います。

まだ持つ状態であれば、そうお伝えします。
工事をおすすめしないという結論になることもあります。
お客様のご予算との兼ね合いで話し合いをして決めることの意味がここにあるというわけです。
外壁だけでなく、住まい全体でご相談いただけます
外壁塗装のご相談をいただく中で、話が広がることがよくあります。
- 「実は屋根も気になっている」
- 「玄関まわりも直したい」
- 「せっかく足場を組むなら、ほかに見ておいたほうがよい場所を教えてほしい」
プレストビルドは、外壁塗装だけでなく住宅リフォーム全般に対応しています。
そのため、塗装で足りるのか、補修や交換まで踏み込むべきかを、同じ窓口でご相談いただけます。
塗装専門の会社では対応が難しい木部の交換や板金の取り替えも、工事の中に組み込むことができます。
足場を必要とする工事は、時期を合わせることで足場費用を一度にまとめられます。
- 屋根
- 外壁
- 雨樋
- 破風板
どこまでを今回の工事に含めるかは、建物の状態を見たうえでご提案します。
- 「そろそろ塗り替えたほうがいいのか分からない」
- 「屋根や外壁の状態を一度見てほしい」
そうした段階からのご相談も歓迎しています。
工事をするかどうか決めていない段階でも問題ありません。
まずは現在のお住まいの状態を確認するところから、お気軽にご相談ください。
気になる部分の写真をお送りいただくだけの簡易ご相談も承っています。

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